責任を果たすことを優先する
自分の感情や考えを大切にして、行動するために境界が果たす役割は重要です。
しかし、自分と他者の間にある境界が分らないという人は少なくありません。
どうしたら発見できるのでしょう?
境界が分らないという人は、自分の責任と他者の責任の認識ができないのが混乱の原因といえます。
たとえば自分の責任でないことを、「おまえのせいだ」と言われて感じ方・考え方を他人にコントロールされてしまう体験を数多くしてきた過去があるのかも知れません。
感じ方・考え方を他人にコントロールされてしまうのは、責任の範囲が整理できないまま育ってきた経緯があるのかも知れません。
親子をはじめ、どのような関係であっても、他者のとの違いを認めあえることは、人権の尊重に他なりません。責任はその延長線上にある問題です。
自分の責任で行動を決定できる、
思ったことを言葉にするかどうか自分で選択できる
これらは憲法で保障されている人権であり、アサーティブであることに欠かせない条件ですが、実際には親しい人との関係で障害が発生することは少なくありません。
恋人、夫婦、親子というように親しい関係であるほど、人権が無視されることが少なくなく、それが他者との関係にも持ち込まれることで、人間関係を複雑なものにし、コミュニケーションに障害の原因になっています。
コミュニケーションにつらい思いが伴うとしたら、もう一度、原点に戻りましょう。
それは親子の関係です。親子は切っても切れないもっとも親しい関係ですが、だからと言って正しい関係性であるかどうかは、約束されたものではありません。
虐待事件が語るように、人権を分かっていない親はたくさんいます。虐待事件に発展しないまでも、精神的にはそれに準じる状態である場合を含めるとその数は莫大なものになるでしょう。
結婚することと恋愛することは次元の違うことです。結婚生活にはそれにふさわしいスキルが必要です。子供を育てることと、結婚することも次元が違います。芸能人の話題になる「出来ちゃった結婚」は、必要なスキルとは関係なく起こった状
態にすぎません。この種の報道が一般人の意識に与える影響は笑える話ではありません。
・他の人が悲しんでいたりがっかりしていると、自分がうしろめたさを感じる
・期待されると、本当はイヤなのに「ノー」と言えない
・相手の反応を気にして、自分の気持を言葉に出来ない
・相手の反応がこわくて、要求を言葉にできない
・相手に合わせて、自分の考え方を変えてしまう
・自分の判断や意見を相手が受け入れてくれるか不安になる
・相手の問題を解決するため、相手以上にあなたが必死になっている
・相手がやった不始末の責任を、あなたがとってしまう
・相手があなたの問題を解決してくれることを期待している
・相手があなたを「幸せにしてくれる」ことを期待している
・相手にあなたがするべき決断を任せてしまう。
以上は、境界の混乱が起こっている事例です。
相手の考えは相手のものです。自分が責任を負う必要はありません。
逆に自分の考えは自分のもので、相手に責任を負わせることではありません。
しかし、親しいと「分ってくれるはず」というように期待が膨らみ、言葉以外のコミュニケーション手段を通じて、コントロールしてしまうことが少なくありません。
境界の越境が始まり、もともと人権の理解が曖昧だと混乱が生じてきます。
たとえば、相手があなたの問題を解決してくれることを期待している場合には注意が必要です。親しい関係である場合、自分の問題が、ふたりの問題になる場合が少なくありません。本当は相手の問題なのに、情熱から自分が責任を引き受けること
はありますが、境界を認識した上で、自分が納得して引き受けるべきなのです。
その場合、自分が予測した反応が相手から得られなかったとしても、相手にその責任を求めることはできません。もし、そうするなら最初から引き受けないことが大切です。
責任の境界線を引けない場合には、相手があなたにもたれかかることを許す、逆にあなたが誰かにもたれかかることになります。最初はよかれと思っていても、やがてストレスが生じて関係のバランスは破綻し、不健全なものになります。分らない
内に共依存になっていると、境界の混乱による悪循環になることもあります。
境界の混乱を避けるための原則を遵守するようにしましょう。
・自分と相手の責任の範囲は別である点を認識しておく
・相手に代わって相手の責任を負わない
・自分の問題を相手に解決させない
・相手の問題を解決するのではなく、問題に悩んでいる相手に共感して励ます
・相手を攻撃するのではなく、事実と向かい合わせる
・自分の問題なのに、事実と向き合わず、相手のせいにする
親しいほど、境界を引くことは寂しさを感じることになります。寂しさから逃げたくて恋愛や結婚にやすらぎを求めるのが一般的だとしたら、境界は引くことに抵抗を感じるでしょう。しかしその思いは必ず裏切られるでしょう。人はそうなっていないからです。
恋愛や結婚は逃げ場ではなくクリエイティブなことを創造する場所なのです。その意欲と行動が寂しさを消し去ることはありますが、創造のない関係は、寂しさを増幅させるだけです。つまりどのような関係であっても人が出会えば、なにかを生み
出すものでなければ発展的な関係は培えないのです。
境界を恐れず、積極的に受け入れて、つまり自立した者が肩を寄せ合い、クリエイティブに実行することに力を注ぎましょう。境界線の前に看板を立てましょう。
「あなたはなにをしたいのですか?」
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